17.政治資金はいっさい国費で

 ある県会議員はこう嘆いた。
「慰安旅行があると、飲み食いの差し入れを要求される。冠婚葬祭には必ず一封、それも最低、他の議員と同じか、それ以上の金を入れて自分で持っていく。政治とは全く何も関係ないことに莫大な金がかかる。それをやらないと間違いなく落選です。そういう悪風習を批判するインテリ層は政治に不信で棄権ですからね」
 リクルート事件による自粛もどこへやら、史上最高、千七百二十三億円の政治資金が一年間に集められた。
 東京新聞の社説は次のように言っている。
「届け出が行われていない分を含めると、実際に動いたカネはこの三倍とも四倍ともいわれている。立法府を構成している国会議員たち自身が、政治資金規正法はザル法であることを事実上認め、法律を軽視しているのだ」
「『道徳なき政治は犯罪である』と言ったのは、シュミット元西ドイツ首相である。政治家は一般の人々より高い倫理観と責任感を求められる。政治にカネがかかるのは当然だし、正当な政治資金は民主的政治のコストだが、その収支は倫理観と責任の裏打ちされたものでなければならない」
 議員が嘆くような愚民の例を、僕はいろいろな所で見聞きした。選挙になると、ソレとばかりに選挙事務所を渡り歩き、票を売り、たかりのように飲み食いし――政治にかかるカネのほとんどは愚民のためではないのか。
 僕はシュミットさんが首相のころ西ドイツに住んだが、政党法という法律で、政治資金はすべて国費でまかなわれる西ドイツでは、日本のような愚民の姿は、僕の目には触れなかった。
 この際、政治資金規正法などというザル法を廃し、西ドイツのように政治にかかわるカネは一切国費でまかない、だれの結婚祝いにいくらと、細かく報告を義務づけ公開してはどうだろう。
 それでも恥じないなら、本当の愚民であり、そんな連中に選ばれたのは、心底、倫理観のない犯罪政治家である。