18.難しい最高裁判官の罷免審査

 投票所に行って困るのは、最高裁判官の国民審査である。
 罷免すべき裁判官に対し×印をつけろというのだが、まったく人物識見を知らない人ばかりだったから、いつも何も書かずにすましていた。
 略歴や判決例を読んだだけでは、一般の人にはその裁判官につき、ほとんど何もわからない。
 投票総数の過半数に×印が達したら、その裁判官は罷免されるのだろうが、過去において罷免された裁判官はいない。おそらくほとんどの人が、僕と同じように彼らをしらないから、白紙で出したのであろう。
 白紙投票は罷免するべきでない、という意思表示だとみなされる。
 前回の選挙で、国民審査の対象となった八人の裁判官のうち一人だけ、僕は個人的にある事件を通し、仕事の能力と人間性を高く評価できる人を知っている。法律に門外漢でも、この裁判官に僕は○印を付けたかった。しかし○印をすると僕の投票は無効になってしまう。
 司法で最高最終の判断をする人たちに対し、有権者全員が罷免する権利を持つことは素晴らしいことである。
 だが、裁判官が罷免に値するか否かを知る、などということは、僕が偶然にもその一人の人を知り得たような例を除けば、ほとんどの有権者にとり不可能なことだ。
 法律を改正したり、方法を考えたり、そう簡単にはいかないだろうが、知識のある代理人によって審査するとか、有権者全部が直接でなくとも関与する形で、何か特別なやり方は考えられないものだろうか。
 何も印をつけないのは知らないからであって、罷免すべきでないと考えたのとは明らかに異なるし、知らない者に審査をさせるのも考えてみればおかしな話だ。
 国政選挙と一緒に投票をやるのも、投票するわれわれには、形式的に、ついでにやっているようにしか受け取れない。