20.党首討論会をもっと活発に

 五党党首討論会をテレビで見た。
 僕は一昔前、西ドイツで全党の党首四人が一堂に会し、ゴールデンアワーに、全テレビ(といっても二つだけだったが)が放映したのを見たが、それに比べて実におとなしかった。
 学者でピアノがプロの腕前のシュミット前首相までが、相手党首の個人攻撃に加わった。発言時間終了のベルが鳴っても発言はおさまらず、他人の発言中に割って入ることもままだった。わが国の激論深夜討論会とまではいかないが、相当の泥仕合で面白かった。
 今回の討論会は、党首たちの総選挙を目前にした票欲しさがみえみえで、紳士的といえば紳士的、しかし、華々しい舌戦とはとても言えなかった。食うか食われるかの時には、ふだんの紳士的態度とはうってかわって、野生本能をあらわす狩猟民族欧米人と、死ぬ時まで切腹と言う儀式を要求した、体面を貴ぶ農耕民族日本人との差であろうか。
 激動の国際情勢への対応、体制の選択、消費税、日米関係、政治改革、農業問題などなど、前もってわかっていたはずだが、論点が多すぎ、わずか三時間ではとても討論しつくせず、一人一回二−三分の発言時間ではまことに消化不良。
 今、党首が一堂に会するテレビ討論ほど影響力のあるものはない。選ぶ方、選ばれる方にとってともに実に有益なものである。テレビは全国民のものになっている。それを使わない手はない。これまでそういう討論会がなかったのが不思議である。
 NHKだけが夜八時から再放送していたが、だれでもが見られるこの時間帯に、他の民放は通常番組を流していた。
 NHK、全民放こぞってゴールデンアワーに党首討論会だけを放映する英断をするならば、まさに西ドイツがやっていたように、大衆の政治への意識はいやが上にも高まったはずである。
 これからは、投票日までにもっと時間をとり、願わくは問題点ごとに何回かに分けて、だれでもが見られる時間帯にやってほしい。