27.学歴偏重は日本の国際化を阻害

 入試シーズンである。
 ニュース番組「ニュースステーション」では、ロンドン、モスクワ、ニューヨークで開かれている、子供が日本で高校受験をするための塾、そしてその子供たちが帰国し受験に備える様子を放映。久米宏キャスターが、海外在住日本人は、親も子も日本にだけ顔が向いていて、日本の国際化はほど遠い、という意味の感想を述べていた。全くそのとおりである。
 実は僕も、二十年ヨーロッパに住み、一人息子は僕の両親にあずけ、日本で教育をした。日本社会から隔絶した根無し草に息子をしたくなかった。いま息子は大学を中退して入ったフランス料理の道に嬉々としてはげんでいる。こんなことだったら向こうで一緒に育てるのだったとホゾをかむ。
 僕は島国根性の非国際的日本人であった。
 しかし、いままでこの学歴偏重社会に背を向け、子供の教育を全部外国にまかすことのできた勇気のある親がどれほどいただろうか。外国生活を余儀なくされ、一人息子を日本から引き上げて手元におき、外国で教育する決断を、久米さんははたしてできただろうか。
 実は妻は、息子を外国に連れていくといいはった。それを僕は、息子の将来のためだと納得させた。羽田空港ですがりついて離れようとしなかった幼い息子のことをおもって、彼女はよく泣き伏した。そんな親の気持ちを、あの放送をみていた人はわかっていただけただろうか。
 僕は日本に向かう子を、空港で見送る父親の姿を、ひとごとと見てはいられなかった。
 血縁社会日本で、日本の高学歴を得ないのは、社会人としての出発の最初からの挫折を意味し、有名校で学ぶのは、人生における特権パスポートをもつと同じなのは、日本人の暗黙の了解事項である。
 学歴偏重の犠牲者は、受験地獄にあえぐ子供たちだけではない。それは日本の国際化をも阻害していることを、番組は教えてくれた。