31.リニアモーターカーは本当に必要か

 リニアモーターカーが東京――大阪を一時間で結ぶようになるそうだ。
 輸送需要の多い人口密集大都市圏にとっては、三時間近くかかる。満杯でパンクしそうな新幹線よりはるかに早い、夢のような話である。
 適切な時なら、内需振興にとり膨大な投資が救世主になるだろうとは、「東京新聞」のコラム「リニアは救世主か」でも述べられた。経済、技術大国日本としても世界居に鼻が高いだろう。
 実験線は山梨県に敷かれ、開通後は本線も山梨を通るそうだが、交通過疎の山梨にとってはまさに救世主だ。僕は東京に住み、山梨県に山荘を持っているが、ワクワクするような話である。
 だが、一部受益者だけが喜んでいてもいいものだろうか。よく考えてみると、一日本国民として僕はどうしても釈然としない。
 新幹線はおろか、在来線すら整備されていない、地方の交通過疎地に住む人たちには何といって説明するのか。
 ただでさえ激しい三大都市圏と地方の格差を、なぜますます広げるのか?
――故・池田首相のところへ選挙区から陳情団が上京したとき「首相となったからには全日本のことを考えるのだから、一地方のための陳情には耳を貸さない」と言ったところ、「ごもっともです」と陳情団は引っ返した、と読んだのを思い出す。
 さらに同コラムが指摘しているが、総工費は三兆円だが、安全性を保証するためには十兆円もの巨大な費用がかかる、と技術は見ているそうで、国家も地方もJRも、とても負担できないので、果たして内需振興のために適切な時期でああるか否かの判断と合わせて、大きな問題がある、という。
 人口密集地帯の人だけが、なぜそんなに急がねばならない?
 ここまで準備が進んでしまって、素人が疑問を呈するのははなはだ気が引けるのだが、常日頃旅をし、中央と地方の格差を知る者として、わいてくる疑問を書かざるを得ないのである。