32.ソニーの買収がなぜ悪い?

 ソニーがコロンビア映画社を買って、アメリカ人の中に反感が起こっていると報道されていた。映画評論家の水野晴郎さんにさんに聞くと、アメリカ映画は資本、過去の名画、抱えるスターなどの総合力で、第一位がMGM・UA社。次にパラマウント、ユニバーサル、20世紀フォックス、ワーナー各社が首をならべ、の次にコロンビアが来る。つまり六位の映画社。
 ソニーがまず狙ったのは「雨に歌えば」「巴里のアメリカ人」などのミュージカル映画や「風と共に去りぬ」「ベン・ハー」等の財産を持つ第一位のMGM・UAで、VHSに押されたベータを、それら名画の8ミリビデオで巻き返そうというつもりであったそうであるが、三分の一の規模の「アラビアのロレンス」「戦場にかける橋」等を持つコロンビアを買収した。
 ブッシュ大統領も問題ないと言った。文句のつけようのない合法的な買収である。
 音楽の世界では、引越しオペラや、オーケストラ、ソリスト、と横文字アーチストたちの来日が引きも切らない。「ゴッホのひまわり」などの名画も、日本人はどんどん買い込む。
 そして今度は映画。外来音楽家の中には、ひどく高価で、国産品より落ちるのが混じる。絵画も日本人が値をつりあげているとのうわさを聞く。今度のコロンビア買収費が高いか安いかは僕にはわからない。とにかくわが国は、ハード輸出ソフト輸入大国である。物を輸出してもうけ、心を高く買っている国とやっかみ、軽蔑する外国人は多いだろう。
 そこで身にしみて考えねばならないのは、オーストラリア資本にMGM・UAと20世紀フォックスを買収されたとき、なぜ今回のように、アメリカ人が騒がなかったかということである。
 オーストラリア人は同じ白人、同じ英語族。だから今度は、肌の色、言葉も考え方も商売のやり方も違う、金もうけするしか脳のない、田舎の金持ちに買収されたと思っているのではないか。
 ソニーは日本を代表してやり玉にあげられたとしか考えられない。