6.文化に税金をかけるな

 消費税に、あれほど猛反対と、こぶしを挙げて叫んでいた世論が、わずかの期間に、ぐんと柔らかくなり、見直しに傾いた。素人の僕には、消費税そのものも良く理解していないし、代案ありやなどといわれても見当がつかないから、なぜあのように絶対反対なのかわからなかった。
 要するに強引に導入を急ぎすぎたからだとしか思えない。
 買い物で一円小銭を出されたり、同じものが高くなったりして、しゃくにさわりはした。だが、その分は減税でカバーされたり、大きな視点に立てば、導入もやむを得ないのではないかと思った。ほとぼりがさめればしゃくの種も弱くなるものだが、それにしても急激だ。
 しかし、既に入場税は悪税だと気が付いて、免税点を五千円にまで引き上げていた入場料に、また逆戻りにして消費税をかけるのだけはやめて頂きたい。
 文化に税金をかけるのはよくない、というコンセンサスが立法府まで広がった。多分近いうちに入場税は全廃だと、われわれ芸能文化に携わる者だけでなく、大勢の劇場に通うファンたちも喜んでいた矢先に、消費税導入で、学校教育での子供たちの鑑賞会にまで、三%の税金がかかってきてしまったのである。子供たちが、年に千円積み立てて聴いたり見たりする芸術鑑賞に、三十円の税金をかけるのは、世界の経済大国のやることではない。
 子供だけではない。今や多くの人が劇場に足を運び、生の舞台を他の人々と一緒に楽しむ習慣が定着し始めているのである。庶民の楽しみを消費税は三%高くしてしまった。
 ちなみに従来の入場税三十二億円(一九八五年)が消費税で四倍の百十四億円になったそうである。
 入場税に税金をかけると言う発想は一九三八年に、戦費調達のために始まった。国のために民は存在していた時代の遺物が入場税だ。
 国民のために国があり、けた違いに豊かになった今、文化に税金をかけることを猛反省して頂きたい。