68.特権意識を振りかざす外人の子供

「ユー アー アグリー」
 乗ってきた金髪の男の子が目の前に立っている大人の乗客に言った。その人は扉の様に立って本を読みながら、笑って取り合わない。眼鏡をかけた中年の日本人男性に対し、乗って来るなり悪態をついた外人いたずら小僧は、相手にされないのを見ると、さらにかさにかかって、近づいてもう一度「あんたは醜い」と英語で繰り返し、東横線の代官山駅で降りて行った。何年か前のことだ。
 ついこの間の午後、JR新宿と渋谷の間。立っている客もいる車内。座席の一プロッタをほぼ占領し、その前にもかたまって立ち、ワイワイ、ガヤガヤ英語で大声で騒いでいる、下校時とおばしき金髪の子僕の集団がいた。日本語をも流暢にしゃべる日本系の子も混じるが、ほとんど英語を使ってふざけあい、迷惑そうに、本を読んでいるふりをしている、隣に座る若者のひざにもたれかかったり、つり革にぶらさがって券械体操のまねをしたり傍若無人。客は皆まゆをひそめているが、だれも注意をしない。
 あれがもし日本の子だったなら、見ず知らずの大人に対し、容貌をけなすなどという無礼を決してしなかっただろう。また、外国語をしゃべる集団でなかったなら、あそこまで居丈高に周りに迷惑をかけなかっただろうし、だれかにたしなめられていたであろう。
 英語は日本語と同じ一つの言葉だ。日本では英語をしゃべるのが上等人種になっている。
 また日本人は外人、特に白人を特別視する。そして子供に対して寛容すぎる。あの子僕たちのためにも、その非をさとしてやる勇気を持つべきであった。居合わせた日本人としての僕の反省である。
 同時に外人の子供たちの親や教師に言いたい。僕の見た二例は多分特別ではない。外国に住んだら、自国でしてはならないことをやってはいけないし、その国の人と協調し言語風習に従うのがモラルである。永年住んでも日本語を全く覚えようとしない外人もいる。
 あの子供たちは疑いもなく、外人特権意識を持つ保護者の影響を受けている。