7.はなやかな舞台、さびしい台所

 日本の、プロのオーケストラと合唱団の楽員の平均年収は、およそ三百六十九万円(平均年齢三十七歳)である=一九八六年十一月−八七年十月。日本音楽家ユニオン調べ= 。トップのN響が六百三十七万円、最低のところが何と百十二万円。他に百万円台が二つ、平均年齢約三十歳。二百万円台が七つ、平均年齢約三十四歳。
 もちろん、この年収で一家の家計はとてもまかなえない。従ってアルバイトでつじつまを合わせることになる。
 中にはアルバイトなどとは言えない、独奏者として一回何十万円のギャラを稼ぐ人も何人かはいる。
 しかし、そのほとんどは、永年高額の投資をして身につけた特殊技能で、音大の非常勤講師から、近所の子供たちを教えるのまで含め、先生として何がしかの収入を得て生計の足しにしているのが現状である。
 音楽家だけでなく、能、歌舞伎、映画、TV、新劇の役者や落語家、漫才師などあらゆる実演家の収入は更に低く三百二十三万円、平均年齢四十六歳、芸歴平均二十四年ほどである=芸団協、一九八三調べ=。
 オーケストラ、合唱団の統計より約四年古いから、現在は少しは良くなっているだろうが、それでも多分、全実演家の平均年収は音楽家より数十万円下回っているはずだ。
 役者さんには、音楽家のように特殊技能で教えるというニーズがない。中には億という年収のある役者さんもいて、全部の平均を引き上げている。新劇の役者さんで無名の人は、皿洗いやバーのホステスなどをして食い、芝居に情熱を傾けているのが現実である。
 日本の勤労所得者世帯の全国平均実収入は五百四十四万円=一九八六年、総理府統計局=。実演家の大部分はそれを二百万円前後、平均を下まわるのだ。
 プロ野球選手の平均年俸が千二百四十六万円で、大リーグの四分の一だ。平均寿命六、七年なのに安い、と言う前に、実演家には、はなやかな舞台から帰ると寂しい台所があることを、ぜひ知ってほしい。