85.こすからい結婚披露宴の中間搾取

 ブライダル・プレーヤーという職業がある。
 結婚式や披露宴でピアノやエレクトーンを弾く奏者のことで、たくさんの人が仕事をもらおうとひしめいている。彼らが手にする金額は、ほとんどが一回一万円前後。なのに今東京では、大体三万五千−五万円の演奏料を結婚業者は取っている(会場に備わっていたり借りたりする楽器使用料二−三万をこのほかに取るところもある)。
 実に、手取りの倍から四倍もの金が中間で消えてしまっているのだ。
 そんな実態を僕が知ったのは、音楽家ユニオンの特別顧問会議の席上であった。
 日本音楽家ユニオンはあらゆるジャンルのプロ音楽家の団体で全国的な組織。作曲家の故・芥川也寸志氏、ジャズピアニストの秋吉敏子氏、ホルン奏者千葉響氏などとともに僕も特別顧問の末席を汚し、活動などにつきアドバイスする合議を年二度持っている。ユニオンと聞くと、アカだという古い通念がまだあるが、一党一派やイデオロギーに偏しない集まりで、偏しないように目を光らすのも特別顧問の役目である。
 合議では前記の驚くべきピンハネ状態が、ジャズピアニスト八城一夫氏より仄聞として報告され、即座に何人かが異口同音にそれを裏付けた。
 善男善女が大金を払わされているのは、ほとんどの場合、プレーヤーが中間業者によって結婚式・宴会場にあっせんされ、そこでキックバックと称する、業者から担当者に渡されるリベートや盆暮れのつけ届けを含んだ、あっせん料を取られるからである。
 だが後の仕事欲しさにプレーヤーは泣き寝入りをしている。
 業者の存在は必要だろう。だが、例えば僕のようなクラシック演奏家の場合は、演奏料からマネジャーには一五%以上はビタ一文払わないし、要求もされない。
 ブライダル・プレーヤーが法外に取られるのは、式をあげる方たちの知識の無さと、有り余るプレーヤー、という状態につけ込んだ悪徳商法の犠牲であるからだ。