88.世のブス諸君、胸を張って歩こう

「なんでみんなオレのことをバカにするんだ、ワーン、オレだってきれいな顔でいたいんだ。おやじとおふくろが勝手にこんな顔にオレをつくってしまったんだ!この顔しかオレにはないんダー!」
「なんでブスが人を好きになってはいけないんだ。オレが、あの人を好きだ、って言ったらみんなが笑ってはやしたてるんだ、ワーン!」
 思春期の子供たちのテレビドラマである。自分の容ぼうに悲観した男の子が、自分で自分の顔を突き刺して、顔を包帯でぐるぐる巻きにして、駆けつけた先生たちに泣きじゃくりつつ訴えている。
「なに馬鹿なことをいってるんだ!お前はちっともブスじゃない。そんなこと言ってる放らの心のほうが、お前よりもよっぽどブスだ」
「そうよ、世の中には顔中ヤケドしたり、あなたなんかよりもっとひどい顔をしても、笑って生きている人もいるのよ。あなたにはちゃんと目も鼻もまゆも唇も立派についているじやない!」
「それに、きれいな顔の人たちは、いつでも人にちやほやされるから気位ばかり高くて人に嫌われるんだぞ」
 ざっとこんなやりとりが、子供と先生たちのあいだに交わされた。
 美貌は財産なり。
 それは変えようのない現実ではある。
 だがしかし、美貌の持ち主が異性にどんなにもてても、いつもちやほやされつけているから、ブスがほんのちょっともてた時よりはるかに喜びは少ない。
 昔、美貌の誉れ高き女優が老醜の身を嘆くこと、いかにブスより大きいことか。
 天は公平である。
 幸福は絶対価値によるものでない!
 世のブス諸君、いやブスと思い込んでいる悲観主義者の多くの諸君。
 お互いに、胸を張って人生を闊歩しょうぜ!