9.洋盛和衰、それが国際化の現実

 ゴールデンウィークも終わり、海外での休暇旅行よりお帰りの方も多いことでしょう。
 ひと昔前ですと、皆様は洋行帰り、ということになります。洋行という言葉には、つい昔までははなはだ晴れがましい思いが込められていました。だが、猫もしゃくしも海外に出掛ける御時世の今は、もうほとんど使われない。
 ちなみに「洋」のつく字を調べてみると、あるわあるわ。
――洋楽、洋食、洋舞、洋画、洋菓子、洋弓、洋室、洋酒、洋書、洋間、洋犬。これらは邦楽、和食、邦舞、邦画、和菓子などわが国本来の者が今でもチャンとあるから、使用されている言葉です。
 洋傘、洋館、洋装、洋裁、洋髪とくると、和傘、和風建物、和装、和裁、日本髪が対語で、「和」のつく方は日常あまり目につかなくなり、「洋」の方が完全にわれわれの身の回りで優勢。
 洋服、洋楽、洋綴、洋紙となると、着るものの総称、学問の代表、とじ方のほとんどすべて、ほとんど百パーセント使われている紙を表現し、洋が和を取り込んでしまい、洋灰―セメント、洋琴―ピアノはもはや死語。
 日本になかったものが入ってきて、昔は「洋」などの字をつかって造語したのが、今では外来語がそのまま日本語になってしまった。
 ジーパン、コーラ、チューインガム、ハンバーガーなど、戦後入ってきたものは、もはや造語もせずにそのまま使用。
 洋風、洋式は完全に和風、和式を制覇。
 昔の日本を知るご年配の皆様。
 欧米からの洋行帰りの方々は、日本が如何に洋化し、急速に向こうに似てきたかを。
 アジア、アフリカなどの発展途上国で休暇をお過ごしの方々は、日本古来のものがいかに速やかに失われつつあるかを、身にしみてお感じになりませんか。
「洋」盛、「和」衰。
 それが国際化の現実ですな。