92.五輪大会のメダル激減は島国のせい? オリンピック選手の皆さん、ソウルでは本当にご苦労さま。メダルをとろうととるまいと、テレビ、新聞を見、ラジオを聴き、皆さんだれもが全力を出し切ったと僕は確信する!本番で雰囲気にのまれるのも実力のうち。最善をつくしたのだ。特に女子一万mの松野明美選手のゴール姿に僕は涙を禁じ得ない。日本記録を三十秒近くも更新し、力尽きゴールではフラフラ、一位の英国選手に抱えられた。二人を比べると身長百四十八センチ、三十二キロの於野さんは、まるで子供。自己ベストを出し、予選で敗れ去り、泣いて謝った。あれ以上は無理、と言っているようだった。どこに謝る必要がある。 僕はヨーロッパに二十年住んだ。向こうでアジア人は目立つ。際立って小さいからだ。スポーツでこのハンディは大きい。体重の階級別はあるが、身長には無い。松野さんは他の選手よりどれだけ多く両足を動かしたことか!数えたら総メダル数のうちアジア人がとったのはわずか一一%に満たない。体格の差である。日本人だけが住むこの極東の島ではその実感がない。 四年に一度の世界一の座。どの国も血まなこになる。決して日本だけではない。ベン・ジョンソンの勝利にカナダ首相自身が国際電話をかけたごとくだ。 ローマとミュンヘンオリンピックの時、僕はたまたま、それぞれの国に住んでいたが、両国民の、そして応援に来た各国人の熱狂はすさまじかった。ちょっと車で走ればすぐ別の国。他流試合も頻繁。国民も選手も他国の力を虎視たんたんとうかがう。そんなことも、この遠くの島国ではわからない。 柔道は惨敗した。本家のおごりで、他国の研究を怠ったといわれる。そうかもしれない。だがそれも島国のハンディではなかろうか。金一、鋼三をそれでもとっている。他の国なら立派なものだ。 これまでのオリンピックのなかで最多の選手を送って、メダル激減の理由は、アジア人であること、他国も必死に研鑽を積んできたこの頃、体格の差は如何ともしがたい。そして島国日本人の非国際性のためである。 選手のみの責任では断じてない。 |