声楽家 岡村喬生・和子夫妻


 岡村喬生さん(71歳)は、地方公演などで旅が多い。和子さん(71歳)がそれに同行することもあれば、どこかで落ち合う時もある。夫婦のもっぱらの楽しみは、旅と食べ歩きである。
「ただ地方公演では多くの場合、舞台の後は主催者との宴席になります。ふたりで旨いものを食べに行くというわけにはいかない」
 と、喬生さんが苦笑する。
 かくして、食べ歩きの場は東京界隈ということになる。2か月に一度は、岡村夫妻が親しい友人と催す「グルメの会」もある。
 最も贔屓にしているのは、渋谷にあるイタリア料理店『ヴィーニ・ディ・アライ』である。イタリア・ワインの品揃えと、それに合った料理が自慢の店で、和子さんの誕生日には毎年、ここで祝うのが岡村家の慣例だ。

◆滞欧生活で覚えた外食◆
 喬生さんは早稲田大学「グリー・クラブ」の出身。28歳の時、声楽修行のためイタリアに渡る。和子さんと、幼子の康生さんを残しての旅立ちである。再び、夫妻一緒の生活が始まるのは8年後。オーストリアのリンツでだった。
 以来、喬生さんはローマ、パリ、ウィーン、ミュンヘンなど、数々の桧舞台を踏み、日本を代表するオペラ歌手の名声を得る。和子さんもオペラ座コーラスのソプラノを担当、いわば共働きである。
「ヨーロッパではオペラの舞台が終わるのは夜の11時か12時頃。外食せざるを得ない生活でした」
 と、和子さんが当時を振り返る。
 滞欧生活に終止符を打ち、帰国したのが昭和54年。日本に戻ってからも夕食は外食の習慣が消えず、畢竟、食べ歩きの機会が増えた。
 積極的な夫に保守的な妻と性格は反対だが、こと旅と食に関しては意見が一致する。結婚生活47年の、"阿吽の呼吸"である。



日本のオペラ普及に力を注ぐ。7月24日から喬生さんが脚色、演出、総監督を勤める『改訂版/蝶々さん』を上演。自宅の稽古室で和子さんと。
 


 
夫妻での散歩が日課。東京・世田谷の自宅を出て、喬生さんはトレーニング・センターで、和子さんは公園を2~3周と、それぞれの流儀で汗を流す。

 
『ヴィーニ・ディ・アライ』のオーナーで、ソムリエの荒井基之さんと。
「同じワインでも、ここで飲むほうがなぜか美味しい」と岡村夫妻。


海外や地方公演の和子さんへのお土産は、決まってアクセサリー。
「外国の女性は、実に上手に身につけていますからね」と、喬生さん。


平成7年、日本ソムリエ協会から「名誉ソムリエ」の称号を贈られた。写真はその記念メダル。江川卓、楠田恵理子さんらも同時受賞。



1970年頃、ドイツ・ハイデルベルクでの夏休み。
滞欧中、日本から息子の康生さんを呼び寄せるには、夏休みしか機会がなかった。
 



●パーソナル・データ
 喬生さん
・贔屓の店/『ヴィーニ・ディ・アライ』(TEL.03-3499-5955)、東京・早稲田の日本料理店『松下』(TEL.03-3202-4404)。
・ワイン/白より赤が好きで、もっぱら赤ワインを愛飲。
・ホテル/贔屓は、『淡島ホテル』(静岡県沼津市 TEL.055-941-3341)と『ホテルプルミエール箕輪』(福島県猪苗代町 TEL.0242-64-3300)。
 和子さん
・宝物/真珠の指輪とネックレス。喬生さんから初めてプレゼントされたもの。
・批評/東京芸大声楽家卒で、喬生さんにとって厳しい批評家。